なぜ定年後はフリーランスという働き方が注目されるのか
今や定年後すぐにリタイアする人は少数派です。定年後もシニアはまだまだ元気ですから、再雇用や別の会社で再就職とさまざまな形で働いています。その様な中、フリーランス(個人事業主)という働き方がシニアに注目されています。
なぜなら定年後はフリーランスのメリットを存分に生かせるからです。定年フリーランスのメリットとして次のようなことが考えられます。
・リタイアの年齢制限がない 元気なうちは働ける
・自分のペースで働けるのでストレスが少ない
・得意なこと、好きなこと、やりたいことで仕事ができる
・会社員のように固定された人間関係に悩むことが少ない
その一方で、フリーランスのデメリットと言われる公的保障の少なさもシニアにはそれほど問題になりません。
サラリーマンは会社員時代に手厚い保障を受けてきましたし、定年退職後は公的年金という公助があるので、贅沢を望まなければ暮らしていくことができます。生活の裏付けがあるから気軽にフリーランスを始めることができるのです。
定年後は、フリーランスとして好きな仕事、継続するのが苦にならない仕事で働くのが理想でしょう。少なくとも自分が「嫌」でない仕事ならば長く働けると思います。
今は自宅やコワーキングスペースで仕事ができ、職種によっては携帯電話とパソコンがあればできます。
誰でも税務署に届ければ個人事業主になれますし、法人を作ることもそれほど難しくはありません。
得意なこと、好きなことで仕事をして、自分の裁量で決めることができるフリーランスはシニアにとって生きがいにつながる働き方だと思います。
定年フリーランスの仕事
では定年フリーランスにはどのような仕事があるのでしょうか?
フリーランスとは、経済産業省の定義によれば「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長で合って、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」です(2021年「フリーランスとして安心して働ける環境整備をするためのガイドライン)。この定義ならキッチンカーで商売をする人、セミナー講師、カメラマンなどさまざまな職業の個人事業主がフリーランスに当てはまります。
得意、好きなことでフリーランス
シニアが得意な事や好きな事で働くことは生きがいにもつながります。会社の看板がなくても勝負できるスキル・商品を持っている人や趣味などで副業をしている人はシニアでもフリーランスになりやすいと言えるでしょう。趣味や得意なスキルを生かし講師やライターなどのフリーランスになっています。
また今までの経験や資格を生かし、経理や総務などの事務作業や広報誌の下請けなど、正社員の業務の隙間を埋めるような仕事で業務委託を受ける方法もあると思います。
スタートアップ企業では、ベテランの社員を求めていることが少なくありません。彼らは新しい技術やビジネスモデルには強いですが、経理や総務、コンプライアンスといったバックオフィスの人材がいないことが多いため、シニアにそれらの仕事をお願いしたいニーズはあるのです。
自分はどんな強みを持っているのか、また世の中に生かせるスキルを持っているのかなど、ぜひ自分自身をマーケティングしてみてください。得意や好きなことで仕事ができればきっと楽しく働き続けることができると思います。
Web系フリーランス
Web業界で働くフリーランスのことです。Webサイトの制作やシステム開発、Web広告配信、動画編集、記事作成などWeb業界の仕事は膨大です。仕事内容はそれぞれ違いますが、パソコンとネット環境があれば仕事を完結できるという特徴があります。
しかしWeb系フリーランスは、若い世代に人気のある職種で仕事内容がどんどん移り変わっていく厳しい世界です。残念ながらこれらの職種でシニアへの求人はほとんどありません。ですがシニアでもこれらのスキルを持っていれば、「クラウドワークス」や「ランサーズ」などクラウドソーシングから仕事を見つけることはできます。Webで仕事ができるため年齢で判断されることもありません。
またWeb系フリーランスと言っても職種によって求められる知識やスキルはさまざまです。WebエンジニアやWebデザイナーになるためにはプログラミングスキルが欠かせませんが、Webライターや動画編集者はそれほどプログラミングスキルは必要とされません。
Webライターの場合、ネット上に掲載される文章を書くことが仕事なので、比較的始めやすく副業としても人気です。プログラミングスキルよりも、リサーチ力、ヒアリング力、文章力などのスキルが必要です。Web知識としてはWordPressやSEOを知っていた方が良い程度です。
興味はあるけどスキルがないとあきらめている人は、一念発起して一から勉強してみてはいかがでしょうか?独学で学んでもいいですし、オンラインで学べるWeb系フリーランスの学校もあります。これからは今以上にWeb知識があった方が暮らしやすいですし、スキルがあれば仕事と巡り合える機会も増えるので急がば回れです。
プログラマーの若宮正子さんは銀行を定年退職後パソコンを購入し81歳でスマホゲームアプリを開発したことは有名な話です。
WordPressを使い名刺がわりにホームページを自作したりブログを書いているシニアはたくさんいます。
一人仕事でフリーランス
会社に雇われるのではなく、個人で事業を始めたり、一人社長として法人を立ち上げる場合もあります。店舗や事務所を構えず、人脈を生かして仕事の請負や代理店などを始めています。
例えばAmazonFlexは、個人事業者に向けてAmazonの配達人を募っています。「働く時間も、働く場所もあなた次第。スマホとアプリで気軽にできる、これまでにない配達業務をはじめてみませんか。」と自社ホームページで告知しています。自分のペースで働くことができるのでシニアにも合った働き方ではないでしょうか。
ただし⿊ナンバーの軽貨物⾞を所有していることが条件になっています。軽貨物⾞はリース等も紹介してくれるようなので採算が合うか調べる必要がありますが、クルマの運転が好きな方には検討してみても良いのではないでしょうか。
あくまでリスクを過大に取ることなく始めることをお勧めします。いろいろな選択肢を持ち、自分に合ったリスクの少ない方法を選びましょう。
まとめ
内閣府「令和2年高齢社会白書」によると、高齢者が仕事をしている理由として「収入が欲しいから」がトップになっています。しかしその次に「仕事そのものが面白いから、自分の知識・能力が活かせるから」「働くのは体によいから、老化を防ぐから」と収入以外の理由がランクインしています。そしてその割合は年齢が上がるほど大きくなっていきます。
定年後の生活は公的年金という公助にある程度支えられています。その上でフリーランスとして自由に働くことは、収入以外の前向きな気持ちを持つことにつながります。
シニアがフリーランスを始める前提として重要なことは①収入の範囲内で生活をする ②借金をしない ③過大なリスクを取らないです。
フリーランスは収入が安定しにくいですし始めは収入がないことは多々あります。もし現状、収入の範囲内で生活できないなら、まずは収入のために働くべきです。余った時間でフリーランスの準備や自分の人生を楽しめばいいと思います。
すべてのことができるということはすべてを自分でやらなければならないということです。フリーランスになることは自由と引き換えに「自分のことは自分で何とかする」ということです。それがフリーランスの醍醐味とも言えるでしょう。
定年後はたくさんのお金を稼ぐことではなく、自分にとっての経済的自立と望ましい生き方を手に入れることを目指せばいいと思います。そのことがシニアのウェルビーイングにもつながります。